NYBCT

1999.10.31

トキオのブラック・ピープルが
語るジャパン・ライフ



 
Black Tokyo com(http://www.BlackTokyo.com)というサイトがある。東京は文京区在住のアフリカン・アメリカン、クレイグ・ナイン氏(aka C-Nine)が主宰するサイトで、日本に住む黒人への情報提供を主な目的にしている。キャッチコピーは「日本で初めてのアーバン・ブラック・ウェブサイト」で、アーバンというだけあってデザインもなかなかシャープ。ややオタッキーな細かいテクニックを駆使したページがいろいろあるけれど、他の在日黒人へのインタビューが断然面白い。(以下は実際のインタビューからの抜粋、意訳、編集版)

●クレメンテ・アダムソン● 

「ここがヘンだよ日本人」でゾマホンと共にすっかりお茶の間の人気者となった怒れるガーナ人、クレメンテ。さて、彼は本当にただの短気なアフリカ人なのか? 本職はアクターだというクレメンテは8年前に、そもそも合気道で黒帯を取るために日本にやって来ている。夢はハリウッド映画進出とビッグ。そのクレメンテにクレイグは“黒人として日本に暮らす”ことについて、かなり突っ込んだインタビューをしている。


まずはお決まりの、来日以前に持っていた日本についてのイメージ…すべてがオートマティック、小さい人々、地震と洪水(?)、その他の自然災害。


実際に日本に着いた時の印象は?…電車の中で笑い声も会話も聞こえず、みんな超シリアスな顔をしているし、誰も他人とは話をしないのに驚いた。


“黒人”としてはどうだった?…キツかった。まずアパートが借りられない。山ほどの規約や規則があって、しかも不動産屋は僕が家賃も払わずに夜逃げするとでも思っていたらしい。本当に大変だった。

言葉については?…あぁ、“それ”も本当に大変だった。(ここでクレメンテとクレイグ共に爆笑) 東京って大都会だから当然、英語が通じると思ってた。でも誰も僕に話しかけてこない以上、僕から話しかけなくちゃならない。で郷に入っては郷に従えで日本語の勉強を始めたんだよ。


「ここがヘンだよ日本人」について…あの番組では僕は「短気な悪者」を演じている。僕の率直な意見をそのキャラクターを使って表現しているわけだ。決して日本が嫌いだと言ってるんじゃない、日本には変わらなくちゃならい部分があると言っているんだ。おかげで今ではサンコンさん並みに顔が売れてしまって、どこへ行っても声をかけられる。一方、日本中から「なんでそんなに日本人を攻撃するんだ」という抗議の手紙もやって来る。でも誠意をもって、僕の言ってることも相手の言ってることも両方正しいんだということを説明すれば最後には人々は判ってくれる。


他の在日黒人アクターへのアドヴァイス…一度、車を運転していたら後続車が路肩に止まれと合図してきて、運転していた男が「日本が嫌いなら出ていきやがれ!」と怒鳴った。顔が売れるということは批判もされるということ。でも日本人からの批判を聞くことは大切だ。だから日本語と日本の文化を学べ。だけど日本人になろうとはするな。“日本人”として受け入れられることはないのだから。自分自身であれ。


最後に…僕たち黒人は残念だけど、いまだに無教育で暴力的な人種だと思われている。日本の法律には、世界基準から見て変わらなければならない部分が多いけれど、でもこの国に住む以上は守らなければならない。自分の行動に気をつけること。

この日本という国を彼なりに愛してはいるけれど、でも100%信用しているわけではないということが判る結構奥の深いインタビュー。


 
●DJ アイク●

東京のクラブシーンでDJとして活躍中。 (在日20年!!)


日本でDJとなったいきさつは?…僕はそもそもミュージシャンだったのに、日本人は黒人なら誰でもDJだと思ってた。ある日、クラブに行くと、そこのスタッフが「DJをやりたいのか?」と訊いてきた。僕が「DJなんてやったことがない」と答えると、「いいよ、そんなこと。ただレコードをかけてくれれば」という調子。そして僕はDJになった。
日本人の無知が在日黒人に幸運をもたらした例か。


 
●ダニエル・ブルックス●

横浜で音楽プロダクション t.o.n.e. を主宰。


日本の音楽ビジネスについて…プロジェクトをまとめるやり方に異議があるし、ひどいマネージメントをされているアーティストもよく見かける。その一方で音楽ビジネスはアメリカより単純に成り立っているから、可能性も大きい。


日本での仕事のやり方…日本人を言い負かすのは簡単だ。彼らは議論を好まないから。だからこそ日本人の考え方を知って謙虚になることが大切。それと、彼らのYesはいつも本当にYesとは限らない。


日本での成功の秘訣…忍耐とコミュニケーション。あと「ここは日本だから、そんなやり方では通用しない」という人間を信用しないこと。

日本に住むことの良い点と悪い点…良い点は平和とビジネスの大きな可能性。気になることは、アメリカから日本にやってきたブラザーの多くが、その可能性を見過ごして、ただ女の子を追いかけていること。


あなたのモットーは?…ビジネス・ファースト、ファミリー・オールウェイズ。トラスト・ゴッド。


まさにシビアなビジネスマン。日本のおじさん達も必読。


 
●テリー・マクミラン●

日米のミュージシャンを手掛ける音楽エージェンシーDe-I プロダクションの創設者。(「ため息つかせて」等で知られる黒人女性小説家テリー・マクミランとは同性同名の別人)


彼女のキャリアも興味深い変遷を辿っている。ニューヨーク/ハーレム育ちのテリーは大学卒業後にまずおもちゃ屋に就職。後にその玩具店がなぜかCBS(現ソニー・ミュージック・エンターテインメント)に買収されたため、彼女の勤め先もCBSレコード・インターナショナルのマネージメント部門に変わる。その後CBSレコードの仕事でニューヨークにあるジャパニーズ・カルチャーセンター内のレコーティング・スタジオを使っているうちに、いつからともなくニューヨークでレコーディングする日本人ミュージシャン達のサポートをするようになったという。つまりCDの帯に「ニューヨーク・レコーディング」と書きたいがためにJALに13時間も乗ってはるばるやっては来たものの、いざ来てみれば右も左もわからないし、スタッフとの意思疎通もできない…そんなミュージシャン達を助けていたそうだ。しかしテリーは、アメリカ人ミュージシャンとはまったく違うバックグラウンドを持つ日本人ミュージシャンとの出会いがキャリア上の大きなインスピレーションになったと言う。そして1992年、アメリカでのコンサート・イヴェント“サイコ・ナイト”に彼女が日本から連れてきて、現地で大きな話題となったのがピチカート・ファイヴだったという成り行き。
オープンマインドで才能があれば、人種に関係なく道は連鎖的にどんどん開けるということか。


そのブラック・トーキョー・コムに「トップ10リスト」なるページがある。要はナイン氏がトキオで見つけた摩訶不思議なモノ、もしくは現象をランキングしたもので、以下が今月のソレ。


(1)日本人は髪をナッピー(黒人のように縮れた髪)にするために一万円以上も払う・・・いかに髪を素直に手綱けるかに苦心している彼らには考えられないこと。


(2)東京には日本で唯一の黒人理髪師による黒人のための散髪屋がある!!・・・本当にあるらしい。


(3)デパートに行くと、スイカが一万円以上もする・・・アメリカではかつて西瓜は白人が嫌う、黒人だけの食べ物だった。最近はそんなことないけれど。


(4)日本語ではブラック・ピープルのことを「コクジン」もしくは「ぶらざ」という(ほんまやで)・・・なにが面白いんでしょうか?


(5)英語学校の講師は少なくとも時給二千円は稼ぐ・・・NOVAなんかのことですね。


(6)牛乳が自販機で買える・・・日本人としては全然フツー。


(7)ホットコーヒーも自販機で買える・・・私も毎日、会社で買ってます。アメリカでは自販機がない代わりに、やたらとコーヒーショップがあるし、どこの食料品屋でもポットで淹れたコーヒーを紙コップに注いで売ってくれる。


(8)パンツすら自販機で買える!!!!・・・キヨスクの紙パンツのことでしょうか?


(9)日本人はいまだにブレイクダンスが最先端だと思ってる・・・ほんとに?


(10)今から半年前、オーディションを受けに行ったら頭で回ってくれと実際に言われた、僕が部屋を出ていく直前にね・・・それは大変でしたね。
 

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