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2002/10/26

ワシントンD.C.エリア連続狙撃事件


 ワシントンD.C.近郊で13人もの一般人を狙撃し、そのうち10人を死に至らしめたスナイパー(狙撃犯)が24日未明に逮捕された。黒人の2人組だった。


 事件が始まったのは10月2日。ワシントンD.C.近くのメリーランド州モントゴメリーのスーパーマーケットの駐車場にいた65歳の男性が狙撃されて亡くなった。翌3日には1日で5人もの犠牲者が出た。いずれもガソリンスタンドで給油中だったり、ベンチに座っていたり、街角に立っていたところを狙撃された。4日にもひとり、7日には初めて子供(13歳)が撃たれた。不幸中の幸いとして少年は命を取り留めたが、子供まで狙うスナイパーの非情さにワシントンD.C.近郊(メリーランド州、ヴァージニア州)は一層の恐怖に覆われた。以後も狙撃は続き、9日、11日、14日、19日、22日にそれぞれひとりずつが撃たれた。計13人の犠牲者の中には白人、黒人、ヒスパニック、インド系が含まれ、女性は4人で男性が9人、うちひとりは13歳の少年。そして24日午前1時頃に警察の記者会見で2人の黒人男性の名前と顔写真が明らかにされた。


 ジョン・アレン・ムハマド(41歳)は湾岸戦争に従軍した元兵士で、17年前にイスラム教徒となり名前をウィリアムスからムハマドに変えている。もう一人はジャマイカ国籍のジョン・リー・マルヴォ(17歳)。当初はムハマドの義理の息子と報じられたが、後に血縁関係はないことが発表された。4歳でジャマイカからアメリカへとビザを持たずに移住し、現在もステイタスは違法移民のまま。記者会見から2〜3時間後に、路上に駐車していた車の中で眠っていた二人が発見され、逮捕された。こうして約3週間に渡ってアメリカを震撼させたスナイパー事件の幕は閉じた。ただし犯行の動機はまだ明らかにされていない。

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 毎日ひっきりなしに報道されるニュースを見ていた黒人たちは「また頭のおかしな白人の仕業だ」と言い合っていた。なぜならアメリカの犯罪史に於いてシリアル・キラー(連続殺人犯)のほとんどが白人男性だったからだ。突発的に銃を乱射して現場に居合わせた無関係な人々を殺すという事件は黒人も起こしている。しかし今回のように周到に用意をし、ひとりずつ殺しては証拠をなにも残さずに現場から姿を消すというパターンの連続殺人事件は白人男性の独壇場だった。


 では、黒人はなぜ連続殺人事件を起こさないのだろうか。


 連続大量殺人などまともな人間には出来るはずもなく、犯人は心理的または精神的に異常を来していると言える。それでも事件を起こすに当たって準備万端を整えるだけの「計画性」「知識(教育)」「経済力」を持っているのだ。


 一般的に黒人よりも白人のほうが高い教育を受け、経済力を持っていることは周知の事実。そして連続殺人に必要な「計画性」もまた、誤解を恐れずに言えば、多くの黒人に欠落している要素だ。なにかを成し遂げたい時、なにを、幾つ、いつまでに準備し、どのタイミングで実行に移せばいいいのか。こういった計画性は子供の頃からの訓練(教育)によって身につくものであり、レベルの低い基礎教育を受けざるを得なかった黒人は、この計画性をなかなか培えない。


 また、現在のアメリカ黒人の特性を奴隷制に結びつけることには反論もあるが、奴隷主から強要されるノルマだけをこなしていた奴隷には計画性を養う必要はなかったため、そのメンタリティが今に受け継がれているとも言える。


 奴隷制が引きずっているメンタリティは他にもある。多くの黒人はいまだに社会の低い位置にあり、彼らは日々の生活に於いてあらゆる不満を抱えている。そしてそれを「白人のせいだ、差別のせいだ、社会のせいだ」とは言うものの、その恨みを実際に白人への報復行動として出すことは少ない。あくまで黒人コミュニティに留まり、ある者は家族など身内に怒りをぶつけ(ドメスティック・バイオレンス)、ある者はドラッグや酒に溺れ、ある者は精神疾患を患ってホームレスとなり、自滅の道を選ぶ。社会的、精神的にとことん追いつめられても、それでも黒人にとって白人はまだ「いくら頭にきても逆らってはいけない相手」なのだろうか? だから黒人の怒りは同じ黒人に向けられるのだろうか? 


 黒人同士の殺人事件は多いし、黒人レイプ犯も多いが、被害者の多くは同じコミュニティに暮らす黒人女性だ。こういった黒人同士の犯罪を「ブラック・オン・ブラック」という。ハーレムも含めて黒人コミュニティと他の地区との間には目に見えないバリアがあり、多くの黒人は、犯罪者ですら、そのバリアを超えることができない。


 対して白人、特に男性は「自分は白人であり、男性である。つまり世界をコントロールする力があるのだ」という思いを無意識下に持っているのかもしれない。連続殺人はそれを他者に知らせるためのひとつの方法なのかもしれない。


 また、ほとんど蛇足ながら黒人が連続殺人犯になりにくい実際面での理由もある。黒人男性が白人居住区をうろつき、しかもライフルの入るような大きなバッグを下げていたのでは、たちまち警察に通報されてしまうということだ。

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 今回のスナイパー事件で黒人逮捕のニュースを聞いた多くの黒人は、「本当に黒人がやったのか?」と驚き、同時に疑わしく思っている。「他に真犯人がいるのではないか?」、「なんらかの理由により、あの黒人2人が犯人に仕立て上げられたのではないか?」、「イスラム教徒の元兵士とジャマイカ移民…なんだか妙に都合の良い取り合わせだ」と。


 ジョン・アレン・ムハマドとジョン・リー・マルヴォの2人が真犯人であれば、ネガティブな方向ではあるが、アメリカ黒人が新たな面を見せたということになる。彼らがもし真犯人でないとすれば、彼らが犯人に仕立て上げられた理由はなんなのだろう。


 最後に犯人が誰であれ、事件の犠牲者の冥福を祈ると共に、大きなトラウマを被った現場付近の住民がなるべく早く元の平穏な生活を取り戻すことを祈ります。


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