NYBCT

2003/06/07




声を上げ始めた西アフリカ移民



 西アフリカのブルキナ・ファソからの移民オスマン・ゾンゴが警察の捜査中に誤って射殺された事件は前回に書いた。


 今日、6月6日にイースト・ハーレムを歩いていると、西アフリカ移民のデモ隊と鉢合わせた。おそらく150人くらいだろうか、「ジャスティス! ジャスティス!(正義! 正義!)」と声を上げながら行進している。普段着の人、スーツの人、アフリカの民族衣装を着た人といろいろだが、彼らはイスラム教徒なので女性の姿はない。プラカードを持った人はおらず、たったひとりだけが小さなダンボールの切れ端を掲げていて、そこには「ゾンゴ、ハーレムはあなたを決して忘れない」と書かれてあった。


 棺と共にモスク(イスラム教寺院)と葬儀場を往復していた行進が、いつしかニューヨーク市警の
レイシャル・プロファイリングに抗議するためのデモになってしまったのだ。

デモ行進

デモ参加者
『ゾンゴ、ハーレムはあなたを決して忘れない』



 ブルキナ・ファソを含め、ニューヨークにはセネガル、マリ、ナイジェリアなど、西アフリカ諸国からの移民が多い。ニューヨークでしばらく暮らしていると、同じ黒人ではあってもアフリカ人とアフリカンーアメリカンとは微妙に顔立ちや職業が違うことに気付き、この街にどれほど多くの西アフリカ人がいるかを、おのずと知ることになる。(ニューヨークのセネガル人コミュニティーについては U.S. FrontLine7月5日号に書きますので読んでください)


 西アフリカからの移民には不法滞在者が多く、彼らは労働許可を得ないままに働いている。だから警察と関わることを極端に恐れ、デモ行進などには普通は参加しない。4年前にブロンクスで、西アフリカのギニア出身の移民アマドゥ・ディアロ氏が、やはり犯罪者ではないにもかかわらず警官に射殺された際には、アフリカンーアメリカンの政治リーダーによる大掛かりな抗議運動が展開された。ところが今日は、葬儀の行進が自然とデモになってしまったのだ。だからアフリカンーアメリカンの姿はなかった。4年の時を経て繰り返された悲劇に、ついに西アフリカ移民も、静かな怒りの声を上げ始めたのだ。



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