NYBCT

2003/08/15




ニューヨーク大停電リポート
BLACKOUT 2003


みなさま

こんにちは、堂本かおるです。

停電に際してお気遣いのメールをいただき、ありがとうございました。大変失礼かとは思いますが、以下の「大停電(Blackout 2003 とメディアは呼んでいます)リポート」にてお返事に変えさせていただきます。


現在は15日(金)の午後4時過ぎ。停電から24時間が過ぎました。ハーレム地区は今朝8時頃に電力および水が復旧しましたが、テレビ局もしくは電波送信システムが電力復旧していなかったとみえ、テレビはしばらく写りませんでした。


今日の午後1時頃に所用があってダウンタウンまで行ったのですが、地下鉄は明日まで復旧の見込みなしということで、市バスが乗車料金無料で走っているのみ。ハーレムからタイムズスクエア(42丁目)までは電力復旧していましたが、ダウンタウンは相変わらず停電状態でした。


今日は学校も休校となり、ビジネスもできるだけ休むように市から勧告が出されていたので、比較的リッチな層が住むアッパーウエストサイド地区のレストランはブランチを楽しむ人で混んでいました。


タイムズスクエアには観光客が溢れていました。昨夜はまったくすることがなく、照明もクーラーも使えないホテルの部屋で寝て過ごさざるを得なかったので、「今日はその分を取り返す!」というヘンな意気込みがあったようです。停電開始がまだ明るい時間だったので、日本人も含めて英語の話せない観光客は停電が起こったこともしばらくは分からなかったのではないかと思います。ブロードウェイのミュージカルは今夜は上演するそうです。しかし42丁目以下のダウンタウンは今も停電のままです。(証券取引所だけは今朝6時に復旧し、通常どおりの取引をしています)


昨日、停電の瞬間には、急に気温が上がって電力消費量が上がったための地域的な停電だろうと思いました。ニューヨークの送電ケーブルには古いものが多く、地域的な停電は毎年のことなのです。(とても“世界の超大国”での出来事とは思えませんが) とりあえず電池式のラジオをつけましたが、電池が古くなっており、ラジオは使用不可能。そこで近所の店で電池が売り切れる前にと思い、表に出ました。


ここはハーレムですから、駐車した車のドアを開け、ボリューム最大でカーステをかけている人はいつでもいます。この日は彼らもヒップホップのCDからラジオに切り替えており、リポーターが「カナダとの国境付近の発電所への落雷が原因で、アメリカ東海岸一帯の送電所にドミノ現象が起きた……と思われるが、はっきりとした原因は不明」と言っているのが聞こえました。直感的にウソだと思いました。「落雷で東海岸一帯が大停電? テロだ」と思いましたが、停電の最中にテロだと発表すれば、またアラブ系やイスラム教徒、または彼等と間違われる人たち(ターバンをまいたインド系シーク教の人たち、または単にアラブ系と顔立ちの似た人)への嫌がらせが起きるだろうし、この時点では仕方がないと考えました。


また、1977年にニューヨークが大停電に見舞われた際には、大規模な商店強奪が起きました。(スパイク・リー監督の映画『Summer of Sam』で当時の様子を見ることができます) 午後4時に停電が始まったということは、当夜中の復旧はあり得ないだろうから、これも心配だと思いました。けれど、ハーレムの人たちはいたってのんきで、相変わらずメキシコ人のアイスクリーム・ワゴンでアイスを買い、中には「今夜は表でバーベキューだな」と言っている人もいました。


いずれにしても、ほとんどの店は電力がなくては営業を続けられませんから、早々に閉店しました。ボデガと呼ばれる小さな個人経営の食料品・雑貨店は照明はないものの、ラジオ用・懐中電灯用の電池、袋詰めの氷などを買う人でしばらくの間は行列ができていましたが、商品がなくなり次第、閉店していきました。こういった個人商店のほうが警備などない分、普段から強盗を恐れているのです。


しかし今回、ニューヨーカーはまったく平静でした。約3000人が逮捕されたという、1977年のような大規模な商店強奪は起こらず、現在のところ20人程度があちこちで逮捕されただけだと報じられています。


なお、停電に伴い、携帯電話のシステムもダウンし、まったく使えませんでした。普通電話もコードレスは使用不可。公衆電話は使えました。テレビもインターネットも使えず、唯一の情報源はラジオでした。


一部には、今回の停電は事故によるものではなく、コンピュータ・ウィルス、またはサイバー・テロが原因だという噂もあります。


という顛末で、我が家はすでに普段の生活に戻っていますが、ダウンタウンの人たちは今夜も停電のままでしょう。お気の毒です。なお、昨夜は60件の火事が起きました。ほとんどは照明代わりのロウソクが原因でした。今夜は何事も起こりませんように。


※電力復旧後ネットにつなぐと、出版社などの方からの“まったく通常どおりの仕事に関するメール”などが何通かありました。ちょっと可笑しかったです



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