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2004/02/29


ハーレム mini ジャーナル
-2004年2月-

2/2
外気温ー5度でも通りでタバコを売り歩く男たち。ダウンを着込んで背中を丸め、通行人に向かって「ニューポート! ニューポート!」と銘柄を連呼する。タバコ売りには元ドラッグディーラーが多いと聞いたけど、これならカタギな仕事に就くほうがラクではないか?



2/3
ハーレムで虎を飼っていて逮捕され、一躍有名になった男“タイガーマン”を通りで見かけた。違法の野生動物を飼っていたカドで裁判中の彼を、なぜか支援するハーレムの政治家がいて、それで最近は高価なスーツを着せてもらって記者会見をしたりしている。ハーレムにはドラマチックで変わった人生を送ってる人が多い。



2/5
深夜、ほとんどの店が閉まり、人気(ひとけ)の減ったチャイナタウンを歩きながら思わず「夜のチャイナタウンって怖いなあ」とつぶやく。すると友人が「ハーレムに住んでる人間には言われたくないよ」。確かに。



2/6
先月、ブルックリンにあるプロジェクト(低所得者用公団アパート)に住む19歳の黒人少年ティモシー・スタンバリーが、自宅と隣りの棟にある友人宅を往復する近道としてアパートの屋上に出た。彼はそこで警官に射殺された。警官は警告を発せず、いきなり発砲したといわれている。これが西暦2004年のニューヨーク。



2/7
わけあってチャイナタウンに暮らしているアフリカンーアメリカン
の少年がいる。アメリカではふつうは黒人がアジア系を見下す図式
があるけれど(指で目を釣りあげて見せたりね)、この少年は学校
でも中国語で会話するチャイニーズーアメリカンの子どもたちに囲
まれて“マイノリティ”としての苦労をしているらしい。



2/9
マンハッタンにチェルシーという、ゲイと高収入な若い人たちが多
く住むエリアがある。そこにあったヒップホップクラブが住人の要
請によりクローズとなった。「刺されて血だらけの人が店のまえに
いた」「客がグラスを割って武器にするので、プラスチック製に換
えた」…。黒人への偏見もそりゃあ生まれるでしょう。自業自得。



2/12
5歳の黒人の女の子(小太りでおしゃべりで仕切り屋)が、ずっと調子っぱずれの歌を歌っていた。ちょっとイライラしてきて「やめなさい」といったら、「わたし〜は〜歌う〜のぉ〜を〜やぁめぇらぁ〜れぇ〜なぁいぃ〜 I can't stop singing.」と歌った。やっぱり音痴だった。黒人だけど。



2/13
今、NYコレクションの真っ只中。最先端デザイナーのショーに顔を出すことがラッパーにとってもステイタスとなっている。「かわいいモデルといい服がいっぱいだ」と、なんともシンプルなコメントをしていたジャ・ルールは、そこらへんの雑貨屋で2ドルで買えるドゥラグを被っていた。いや、それもデザイナーズブランド?



2/14
ジャズドラマーの友人が、ぽっくり亡くなった。大学教授で、1年に何度かはアフリカに行ってアフリカ人に「アフリカンドラム」を教えていた、自分はアメリカ人なのに。いつもたくさんのプロジェクトを抱えてフル回転で生きていた人だから、いい感じで人生アガリ、だったかも。天国でもドラム叩いてそうだけど。



2/15
事情あってレジーナ・ベル&フレディ・ジャクソンのコンサート
@アポロ劇場に行くハメに。日本でいうなら和田アキ子&中条きよ
しの歌謡ショーって感じでしょうか。客は毛皮のコートで盛装した
黒人のおばさまばかり。フレディは赤いバラをくわえ、客席に向かって「ベイビー、僕の汗をふきにきておくれ」とささやいていた。



2/17
地下鉄の中で見つけたCDのフライヤーには「オラ!スピック!」
と書かれていた。ラティーノ版「ヨー!ニガ!」だ。ブロンクスの
Prolifikというアーティストで、CDタイトルは『キラー・カラオケ・ミックステープ』で、発売元は「不死身エンターテインメント」で、なのに「神さまに感謝(とーぜんだろ)」のコメント付き。



2/18
ハーレムの路上でハングアウトしていた若い男ふたりに「チャイニーズ?」と訊かれる。いつものことなので無視!無視!と思いつつ、悪気はなさそうなタイプだったので、一応あかるく「違うよ」と答える。すると「オー! チャイニーズ・シークレットか?」と、もうワケわからん反応。



1/21
ハーレムの軽食堂の前に停めてあった車に、警官が駐車違反チケッ
トを貼ろうとしていた。それを店の中から見た車の持ち主は慌てて
飛び出し、警官に言い訳をはじめた。けれど警官はそれを黙殺して
チケットを発行。ちなみに警官も車のオーナーも黒人男性。“ブラ
ザーの絆”も駐禁には通用しないのだ。



2/23
黒人は男性もすごい毛皮を好む。最近、街で見かけたヒットは、真っ赤なバックスキンのコート。スソとソデはわざと斜めにカット。もうひとつは、白と薄茶色のコンビのキツネのコート。背中にキツネの顔と前脚が縫い付けられていて、着ている男性が歩くたびに前脚が揺れていた。デザイナーに会ってみたいと思った。



1/25
ハーレムで郵便局に向かって歩いていた時。目の前でふたりの黒人男性がすれ違い、その瞬間に握手をした。なんてことない当たり前の光景に見えたけれど、ふたりとも沈黙のままで、握手した手の中にドラッグの小さな袋があった。映画ではよく見かけるシーンだけど、さすがに本物ははじめて見たなあ。



2/27
ニューヨークが舞台の刑事ドラマを見ていた。白人男性が事件の容
疑者で、刑事がその男のアパート正面入り口で男に質問をするシー
ン。あれ、私が住んでるアパートではないか。本当はハーレムだけ
どダウンタウンという設定になっている。通行人もすべてエキスト
ラで、金髪の女の子なんかが写ってた。ハーレムなのに。



2/28
ハーレムの小さなイベントにブレイクダンサー登場。プエルトリコ系の若いダンサーで、オフステージではシャイな彼。でもダンスは一流でヘッドスピンも越グルグルもの。それを見ていた小学生の男の子がとたんに真似して踊りはじめたら、お母さんが「危ないからやめなさい!」と叱ってました。



2/29
うるう年





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