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2004/12/01




海賊盤をめぐる人さまざま on 125丁目


 すでにクリスマス・デコレーションの始まったハーレム。目抜き通りの125丁目。本屋に行こうと歩いていると、ちょっとした人だかり。


 地面に敷かれた透明のビニールシートにたくさんの海賊盤CD。ビニールシートは四隅がめくり上げられ、CDがくるまれたようになっている。その背後にはアジア系の警官。


 海賊盤を売っていた男たちの姿はすでにない。ふつうなら警官の姿を遠くに見つけた瞬間にCDをまとめて走り去るのだけれど、今日は警官が真近に来るまで気付かなかったのだろう。商品を残して逃げてしまったのだ。


 通行人の黒人男性が警官に向かって大声を出す。「お前はハーレムで働く、人種差別主義者のチャイニーズだ!」


 その瞬間に、アジア系警官のパートナーが車道を横切り、現場にやってきた。警官は単独ではなく、必ず複数で勤務する。パートナーは黒人だった。


 通行人の黒人男性は一瞬ひるんだように見えたものの、さらに声を上げる。「お前の仲間だってチャイナタウンで海賊盤を売ってるじゃないか!」


 これが、黒人だけが持っている「誰のことでも好きなだけ人種差別主義者呼ばわりできる」、お得なライセンスだ。「自分たちはいつも差別されている」という被害者意識が高じ、黒人が非黒人によってダメージを被ると、黒人側に非がある場合ですら「人種差別だ!」と主張する。


(1)アジア系警官は任務を果たしていただけ。しかも、今日は積極的に海賊盤売りを逮捕しようとしたのではなく、売り手が先に逃げてしまったのだ


(2)「アジア系=中国系」「中国系=チャイナタウン」というステレオタイプ。警官は韓国系だったかもしれないし、それ以外かもしれない。サングラスをかけていたので、私にすら判別できなかった



(3)仮に警官が中国系であっても、彼の「仲間」がチャイナタウンで海賊盤を売っているわけではない


 「黒人地区で働くアジア系警官」である以上、こんな体験は珍しくないのだろう。警官は男性の罵声には応えず、淡々と任務を遂行していた。


 そこへたまたま通りかかったのが、交通課の警官(黒人女性)。彼女はウンザリしたように「Take them.」(さっさとCDを押収して、行ってしまいなさい=意訳)とつぶやき、歩き去ってしまった。


 ちなみに、本屋での用事を済ませて1時間後に同じ場所を通り掛かると、もちろん別の海賊盤売りが商売をしていた。アメリカのクリスマスって物入りだからね、みんな稼がなくちゃ。Happy Holidays to everybody!!





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