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2000/08/05

ハーレム再開発ブーム
その真っただ中で


ハーレムの再開発は着々と進んでいる。シネマ・コンプレックス完成、大型マンション建築ラッシュ、現在はSOHOにあるアフリカン・アート美術館のハーレム移転計画、マルコムXプラザ完成など、ここ数ヶ月、テレビや新聞でハーレム関連のニュースを聞かない日は、ほとんど無いと言える。特に今月1日に
“ハーレム・ウィーク”が始まってからは、メディア報道がさらに勢い付いている。


“ハーレム・ウィーク”とは言うものの、実際にはいろいろな催しが、ハーレム内のあちこちで8月1日から22日までの長期間に渡って開かれる。このネーミングの適当さがハーレムの良いところと回りを納得させつつ、まずは8月6日に、ハーレム歴史自転車ツアーが行われた。これは毎年恒例のイベントで、自転車でハーレム内の歴史的エリアを回り、途中休憩の公園ではライヴ・エンターテイメントも有り、というもの。開催日の3日前には、なんと朝のニュース・ショーがイベント協賛のハーレムYMCAまで取材に来、リポーターがサイクリストや子供たちを大フィーチャー。これはハーレム再開発ブーム前には考えられなかったことだ。


また、ニューヨーク市内のローカル・ニュースのみを24時間オンエアしている
テレビ局NY1には、レストラン評価本ザガット・サーベイによる人気レストラン紹介コーナーがあるのだけれど、ここでもロンデルズ、エイミー・ルース、6月にオープンしたばかりのバイユーなど、ハーレムのレストランを特集。これもザガット・サーベイ・コーナー始まって以来、初めてのことだ。


他にもハーレムに建築中の大型マンションや、既存のブラウンストーン(特有の建築様式の一戸建て住宅)の内装を改築したものを売り出すための、不動産屋によるイベントの報道もあった。


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こういった報道ラッシュにハーレムの住人たち自身も驚いている。大方の人は肯定的に見ているようだけれど、中には不安を感じている人たちもいる。例えば、先に挙げたマンションや住宅。これらを扱っている不動産屋は、ハーレム再開発にビジネス・チャンスを目敏く嗅ぎ分けた白人であり、家賃も高い。つまり住人は白人と中流階級の黒人であり、地元の住人には手の届かないものとなる。これを、ハーレムがどんどん商業化され、搾取されている証拠だと不快に思っている人たちがいるのだ。


それは確かに事実。だけど良い面もある。大型マンションの一階にはテナント店舗がたくさん入る。そこには新たな雇用が生まれる。また、黒人白人を問わず、中流層が多く流入すれば、彼らは質の高い商品やサービスを要求するので、既存の店舗も質を上げざるを得ない。さらに白人が多く住むようになれば、そこにはささやかながらも、黒人と白人との交流が生まれる。


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観光客の目でハーレムを歩いて見る。通りを歩いているのはほとんど黒人。通りに出ている露天商が売っているカードやTシャツも黒人をデザインしたものばかり。ビルを見上げた時に目に飛び込んでくるのはラッパー、リル・キムの新作CD「ノトーリアス・キム」、エディ・マーフィの新作映画「ナッティ・プロフェッサー2」、ヒップホップ・ファッションFUBUの巨大広告…。観光客にとっては正に“ちょっと危険かもしれないけれど、でも、これってファンキー!”な街である。


でも、多人種国家アメリカにあって、こんなにひとつの人種だけが固まって暮らすことが果たして健全だろうか? もちろん、だからこそ固有のカルチャーが守れるんだという意見もあるだろうけれど、しかし人種融合は必要だ。


ハーレム再開発は、気を付けなければアフリカン−アメリカンが白人資本に搾取されて終る可能性もある。だけれど人々は、そんなに愚かではない。アフリカン−アメリカンが巨大な白人資本を上手に利用し、経済発展と健全な人種融合を手に入れることは、簡単ではないにしろ、可能な筈だと信じる。

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