アフリカン・アメリカン・デイ・パレード

2000/09/24

アフリカン-アメリカン・デイ・パレード
プライドを赤黒緑の旗に託して

［アフリカン-アメリカン･フラッグ］９月17日の日曜日、ハーレムで毎年恒例、今年で既に32回目となる「アフリカン-アメリカン・デイ・パレード」が行われた。３時半頃に７thアベニュー（別名アダム・クレイトン・パウエルJr.ブールバード）に着くと、そこは赤・黒・緑の“アフリカン-アメリカン・フラッグ”を手にした見物人で、既にごった返していた。

カラフルなユニフォームに身を包んだマーチング・バンドとチアリーダーのユニットが、いくつも、いくつも続く。バンドの多くはブラスよりもドラムが主体で、一般的なマーチング・バンドに比べると、リズムが、かなりアフリカ的。そのファンキーなリズムに合わせて踊る後続のチアリーダーも、カレッジの学生チームから小中学生チームまで様々。なかでも人々から拍手喝采と笑いを得ていたのが５～６歳の女の子たち。みんな小さいのに、とにかくダンスが上手い。しかも、時にはミニスカートを翻して、そのキュートなヒップを左右に振ってみたりと愛嬌もたっぷり。

また、各種黒人団体のチームも多かった。なかでも黒人消防士チームには驚かされた、ニューヨークにこんなに黒人消防士がいたのか、と。というのもニューヨーク・シティの消防士のうち、なんと94％(10,643名)までもが白人なのだ。黒人消防士はわずか2.8％（321名）で、ラティーノ消防士が３％（341名）。市の人種構成が白人38％、ヒスパニック28％、黒人25％、アジア系9％であるにもかかわらず。（1999年現在）
NYPD（ニューヨーク市警）全体に於ける黒人警官の比率がかなり高いのに比べ、なぜかNYFD（ニューヨーク消防局）には強烈な雇用差別が依然としてはびこっており、ハーレムなどの黒人地区の消防署にさえ、黒人消防士はほとんどいない。

しかし、このパレードには女性消防士も含め、かなりの数の黒人ファイヤー・ファイターたちが参加していた。彼らはピカピカに磨いた自慢のファイヤー・エンジン（消防車）に乗って息揚々と行進したのだけれど、車体に書かれている地区名をみると、リバーデイル、ローズベルトなど、ニューヨーク州の他の地域の黒人地区からも多数が参加しているようだった。アフリカン-アメリカンの連帯意識の強さに気付かされるエピソードだ。続くエマージェンシー・メディカル・ユニット（救急隊チーム）は、もちろん救急車に乗っての行進だったのだけれど、十台以上も連なった消防車、救急車がすべてサイレン全開なものだから、もう、うるさくてしょうがない。アフリカン-アメリカンのお祭り好きを象徴する光景だ。

続いてグリーンの制服に身を包んだNYDS（ニューヨーク衛生局）の黒人職員が、ステンレスで車体を覆った、目も眩むばかりのパレード・スペシャル仕様ゴミ収集トラックと共に行進。この職業には黒人はかなり多い。他に黒人の割合の高い仕事と言えば、地下鉄と市バスの運転手、郵便局員など。いずれも公務員だ。

その後には看護婦組合、板金職人組合、電気工組合などなど、職業別労働者組合の黒人部やNAACP（全米黒人向上協会）といったカタめのチームが続いたかと思うと、WBLS, KISS-FMなど、ブラック・ミュージック専門FM局の賑やかなトラックが行き過ぎる。

・・・・・

それにしても、かなりの数の見物人が出ており、屋台が連なったハーレムのメイン・ストリート125丁目では、一時歩くこともままならないほどの混雑だったものの、それでも５月のプエルトリカン・デイ・パレード、９月第１月曜日のウエスト・インディアン（カリビアン）デイ・パレードほどの規模ではない。加えて白人や観光客の姿が、ほとんどどころか、全くなかった。なぜだろう。

規模の大小については、プエルトリカンとウエスト・インディアンは全米でも特にニューヨークに集中していることから、他の州では同様のイベントがあまりないのに対し、アフリカン-アメリカンは各州で同様のイベントを開くから、ということが考えられる。またマーチング・バンドは確かに華やかだけれど、ウエスト・インディアン・デイ・パレードの絢爛たる衣装にはかなわないし、プエルトリカン・デイ・パレードは観光のメッカ５thアベニューで行われるため、誰でも気軽に来れるということもある。

見物客が黒人オンリーだった理由としては、主催者がなぜか外部に対する宣伝を一切しないため、ニューヨーカーですら、このパレードの存在を知らない人が多いこと、また、ハーレムにはまだまだ白人や観光客は来にくいことが挙げられる。

“結束を固めるために働き、黒人に正義と経済基盤を”というスローガンを掲げて行われた今年のアフリカン-アメリカン・デイ・パレード、８月に行われたハーレム・ウィークと同様に、主催者のプロモーション・スキルの足りなさと閉鎖性が気にかかる。

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プライドを赤黒緑の旗に託して