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2000/11/24

Do It Yourself で
ハーレムにコンピュータを導入


 アメリカには、コミュニティや教育を支援する非営利団体や、民間企業がスポンサーとなったプロジェクトが無数にある。義務教育や最低限の住民サービスはもちろん行政の仕事だけれど、貧富の差が激しく、人種・エスニックも多岐に渡っている此処アメリカという国では、 住民が必要とするものが地域によってまったく違い、行政が全てをカバーすることは不可能なのだ。(例えば狭いマンハッタンの中ですら、低所得者エリアと上流階級エリアが通り一本で隣り合わせていたりする) それに加えてアメリカには“Do it yourself”と“寄付”の伝統がある。行政が不十分なら自分たちでやろう、資金は寄付金を募ろう、という考え方である。


 そういった非営利団体(nonprofit organization)の内容は、教育や住宅の斡旋、住民の健康管理といった日常生活でのあらゆるサービスからホームレスへの食事提供まで実に様々で、ハーレムにも多数の団体がある。


 ハーレムは言うまでもなくアフリカン−アメリカンのコミュニティであり、最近は中流層も増えてきたとは言え、やはり平均所得はまだまだ低い。では低所得者層が豊かな生活を手に入れる方法とはなんだろう? 答えは教育。子供にきちんとした教育を与えれば、将来、その子供たちは高収入を得られる仕事に付くことができ、それと同時に自尊心も生まれ、それがコミュニティを経済面・精神面の両方で豊かにする。


 では次ぎに、現在、子供たちが必要としている教育とはなんだろう? いつの時代にも必須であるメンタル・デベロップメント(精神面での育成)を別にすれば、それは“コンピュータ・テクノロジー”である。従って現在ハーレムには、コンピュータ教育をバックアップする非営利団体プロジェクトが多数存在する。

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 先週の金曜日、11日17日にハーレムで、HR2K1(Harlem Renaissance 2001)というプロジェクトのお披露目イベントがあった。これはハーレムにあるアビシニアン教会傘下のアビシニアン・デベロップメント・コーポレーションという非営利団体が核となって、ハーレムのコミュニティ&教育団体にコンピュータを提供するというもので、今回はハーレムYMCAを含む6団体にコンピュータ・ルームを設置。当日は、まず朝のニュース・ショーがYMCAに取材に来、プロジェクトの責任者がインタビューに答えた。それから参加団体をカメラ付きコンピュータ・ネットワークで結び、お互いがモニター画面上で自己紹介。昼には125丁目のバラエゾン(日本でならNTTに相当する電話会社)のハーレム支社に全員が集まってのランチ、さらにバスに乗って実際に各団体の施設を見学。最後はハーレム・スクール・オブ・ジ・アーツのロビーでのワイン・レセプションという忙しい一日だった。


 アビシニアン・デベロップメント・コーポレーションは以前から、コロンビア大学(ハーレムに隣接する場所にある)からの技術提供のもと、こういったコンピュータ教育関連のプロジェクトを進めている。また通信テクノロジーのメッカである電話会社バラエゾンのハーレム支社もハーレム・コミュニティへのテクノロジー導入・向上に貢献している。

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 今回のプロジェクトには、ふたつの意義がある。ひとつは、住民の手の届くところに多数のコンピュータが設置されたということ。ふたつめは、白人社会に比べてテクノロジー面で遅れを取っている黒人コミュニティも、追いつくための努力を、こうやって地道にしていることを内外に知らせたということ。


 こういう風に書くと、なんだか難しいことのように思えるかもしれないけれど、コンピュータ教室での子供たちを見れば、理屈抜きに納得できる。… 迎えに来たマミーを無視してモニターの中のウサギに張り付く3歳のジェイド。算数ソフトに夢中で、5歳なのに眉間にシワを寄せているジミー。ケンカしながらも、ふたりで難解なパズルに取り組んでいる9歳のジュリアンとブリトニー。歴史CD-ROMでリサーチし、Word 2000でハーレムの歴史についてのレポートを書き上げつつある10歳のジェシカ。… この子たちには、とにかくコンピュータが必要なのだと。

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