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2001/09/23

米国同時多発テロ事件 #04
ニューヨークは今…



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 ニューヨークでは現在、さまざまなこと 〜 行政による大規模な作業から、一般の人たち個々人の問題まで 〜 が同時に起っています。

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●WTC現場では今も行方不明者の捜索が続いています。


●行方不明者を尋ねるもの、戦争反対の署名を促すもの、アメリカの強さを謳ったものなど、様々なチェーンメールが人々のパソコンを駆け巡っています。


●ところが、いまだに事件現場以外の、例えばミッドタウンでも電話回線に問題が残っている場所があり、役所や企業でもデータベースにアクセスできずに業務マヒしているところがあります。


●役所などではビジターの身体・荷物検査がとてつもなく厳しくなりました。税務署ですら、女性の化粧ポーチの中身までチェックしています。



●同時多発テロが起きた日は、実はニューヨーク市長選の予備選挙日でした。アメリカは二大政党制ですから、予備選で民主党・共和党の代表立候補者を決め、そのふたりが11/6の本選で戦う段取りでした。当日の事件直後に予備選は中止となり、9/25に再度行われることとなりましたが、その間に現市長ジュリアーニの、前代未聞の非常事態に於ける強力で安定したリーダーシップが大いに評価され、彼の市長続投を訴える声すら出たほどです。マイノリティへの厳しい態度が批判され続けてきたジュリアーニですが、今回の件ではニューヨークはもとより、全米のヒーローとなりました。その一方で、予備選当日の朝まで繰り広げられてきた時期市長候補者たちによる市政論争(例えばラティーノ候補者によるマイノリティ策)は吹っ飛んでしまいました。


●観光業、航空業、娯楽産業は取り返しのつかないダメージを受けています。航空会社は大量解雇を実施し、旅行代理店勤務者の中にも自宅待機となっている人がいます。人気ミュージカルも客の激減で今日23日で閉幕となるものがたくさんあります。また観光客だけではなく、ニューヨーカー自身も消費意欲を無くし、ブティックやレストランの売り上げが減少しています。あれだけの大惨事を経験した直後ですから当然のことなのですが、事態を危惧したジュリアーニ市長は「ニューヨークを援助したいのなら、これまで通りにミュージカル観賞やレストランでの食事にお金を使って下さい」という旨の一面広告を新聞に出しました。



●大量解雇で職を失った人たち、客の減少で店をたたまざる/辞めざるを得なかった人たち、WTCの生存者などの求職活動がまもなく始まると思われます。その数に見合った求人が、今のニューヨークにあるのでしょうか。



●またWTCでは多くのカリビアン移民、メキシコ移民が警備員、清掃員、受け付け、事務員、またレストランの従業員として働いていました。彼らはアメリカで働いて、本国の家族に送金をしていましたから、今回の事件は中南米にも経済問題をもたらします。



●けれど移民によるみやげ物店や露店は逞しさを見せています。事件直後からアメリカ国旗や、国旗をあしらったTシャツは大量に売られていましたが、数日後には国旗とツインタワーを組み合わせたデザインや「Attack on America」と書かれたシャツが登場しています。またWTC爆発の瞬間を写した絵はがきも売られていると聞きました。


●アラブ系移民やイスラム教徒は毎日、大きな不安を抱えながら生活しています。ニューヨークでも彼らへの数々の嫌がらせが報じられています。さらに「日本人/白人/黒人/ネイティブ・アメリカンのミックスで、顔立ちがアラブ系に見える男性」も不安がっているという記事(9/23ニューヨーク・タイムズ)も目にしました。中近東からの留学生たちは帰国を検討しているようです。産油国の大資産家の子息たちが帰国すれば、大学は超多額の寄付金を失うことになります。


●アメリカの教育関連機関や団体は企業からの寄付で成り立っている部分も多いのですが、今回の経済危機により企業が寄付金の額を減らすことが予想されます。そうなると低所得家庭の子供への大学奨学金も減ります。


●今回のテロはオフィス街と国防総省へ行われましたから、子供の被害者は少なかったのですが、けれど、数千人の子供が母親や父親を失いました。

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ニューヨーカーも戦争の影に神経質になっていますが、実は戦争とは別なレベルでの、生活に密着した部分での不安要素がたくさん、既に現れているのです。


けれど、犠牲者や戦争のことを心に置きながらも、でも、なるべく普段どおりの生活に戻ること、それがニューヨークを建て直すいちばんの方法なのです。

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