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2001/10/14

レイシャル・プロファイリング
アラブ系への人種取締まりに賛同する黒人



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レイシャル・プロファイリング
racial profiling
人種による選別、人種による追求差別
【用法】 State troopers engaged in racial profiling.
    :州警が人種によって取締まりを差別した。
              (英辞郎on the webより)


 アメリカで「レイシャル・プロファイリング」と言えば、一般的には警察が黒人やラティーノの、特に若い男性に的を絞っておこなう人種偏見に基づいた捜査方法を指す。具体的には、街中で警官が『不審』なマイノリティ人物を呼び止めて身分証明書の提示を求めたり、身体検査をおこなうことが多く、これは「ストップ&フリスク(呼び止め・身体検査)」と呼ばれる。


 ニューヨークでは8年前にジュリアーニ現市長が就任してから、ニューヨーク市の治安を良くする(=犯罪発生率を下げる)ために、徹底的なレイシャル・プロファイリングが始まった。犯罪発生率は白人よりも黒人のほうが高いから、街を歩いている黒人を呼び止めて不審尋問をすれば、拳銃や麻薬など違法なものを所持している者を捕まえることが出来、つまりは、その人物が近い将来に起こすかもしれない大きな犯罪を未然に防げるという理屈で、この場合の『不審人物』とは、マイノリティの若い男性を指す。もっとも人種偏見に基づいたレイシャル・プロファイリングはそれ自体が違法なので、市長やニューヨーク市警はレイシャル・プロファイリングををおこなっていることを認めてはいない。


 ところが、市長や市警のこの理屈は正しかったのかどうか、ニューヨークの犯罪発生率は確かに下った。それでも、たとえ効果があったにしてもレイシャル・プロファイリングは、絶対におこなってはならない捜査方法。仮に(単に仮説として)黒人10人中9人が犯罪者であったとしても、そこには1人の善良な市民がいる。その人物は黒人だというだけの理由で、街を歩いていている時に突如として警官に呼び止められ、公衆の面前で身体検査をされる。で、なにも出てこなかったら、警官の「もう行ってもいいぞ」の一言で放免される。その人物は、間違ったことは何もしていないどころか、真面目に働き、税金もきちんと納め、社会に貢献しているのに、ただ『黒人』だというだけで『犯罪者』として扱われたのだ。黒人=犯罪者??? 若い黒人男性の中にはストップ&フリスクを何回も何回も経験している者が大勢いる。


 黒人やラティーノの親は息子が12〜13歳になったら、「警察に呼び止められたら素直に従え。背中を見せて走り逃げたりしたら撃たれるから」と教えるという。実際に警官を振り切って逃げた少年が撃たれて死亡した事件もあった。少年が握りしめていたチョコレート・バーが警官には銃に見えたのだという。


 2年前にブロンクスでアフリカ移民が4人の白人警官から41発もの銃弾を浴びせられて死亡した事件があった。これも不審尋問されたアフリカ移民がとっさに身分証明書を出そうとしてサイフを握ったところ、それを銃に見間違われて撃たれたのだった。


 これがレイシャル・プロファイリングの実態と結果。これが如何に間違ったことであるかは、被害者である当の黒人がいちばん良く判っている…はずだ。

・・・・・

 今回のテロ事件発生後、当然のことながらアメリカ国内に住むアラブ系への目が厳しくなった。FBIは既に何百人ものアラブ系を捜査し、事件に関連ある者は逮捕され、関連なかった者も不幸にして出稼ぎ違法移民であれば、母国への強制送還となっている。


 そして巷ではアラブ系へのレイシャル・プロファイリングの是非が討論されている。これはもちろん一般犯罪の防止が目的なのではなく、大規模なテロを未然に防ぐための捜査であり、だからストップ&フリスクだけではなく、電話の盗聴なども含めての話。先週、黒人テレビ局BETの政治討論ショーでもこの話題が取り上げられ、そこでは一般人への意識調査が報告された。


Q:アラブ系へのレイシャル・プロファイリングに賛成?
賛成:白人53%、黒人71%


 自身がレイシャル・プロファイリングの犠牲となり、その廃止を長く訴えてきた黒人が、なぜ、他人種へのレイシャル・プロファイリングに賛同するのだろうか。その理由は深く、複雑だ。

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