NYBCT

2002/05/08

黒人?
ブラック?
アフロ−アメリカン?
アフリカン−アメリカン?
黒人の正しい呼び方



Q:黒人/ブラック/アフリカン−アメリカン/アフロ−アメリカン…。さて、アメリカの黒人を呼ぶのにふさわしい呼称はどれでしょう?


 この問いに関して私がまず思ったことは、ブラックカルチャーに親しんでいる、または詳しい日本の人は『アフリカン−アメリカン』よりも『アフロ−アメリカン』を好み、また『黒人』という表現を避ける人も多い、ということでした。

・・・・・

 アメリカでの現状ですが、人種/民族として大きく捉える場合には、White/Black/Hispanic(*)/Asian..... となります。国勢調査もこの区分と呼称で行われます。この場合のBlackには、いわゆるアフリカン−アメリカン以外にも、カリビアンであれ、アフリカからの移民であれ、それ以外の国の出身であれ、人種的に黒人である人はすべて含まれます。ですから、例えば『Blackの大学進学率が上がっている』という記事があったとしたら、それは出身国/地域に関係なくすべての黒人を含んでいます。


*ヒスパニックは人種としての区分ではなく、“スペイン語圏出身者”という文化的区分。外見が黒人であっても、例えばドミニカ共和国出身者などはヒスパニックと呼ばれます。野球選手のサミー・ソーサなどがそうです。


 とは言え、アメリカの黒人の中ではアフリカン−アメリカン(かつてアフリカから奴隷として連れてこられた人たちの子孫)が多数派ですから、Black=African Americanというニュアンスで語られることが多いのも事実です。例えば『Black History』というタイトルで語られるものは、アフリカから連れてこられた最初の世代にまつわる部分を除けば、ほとんどがアフリカン−アメリカンの歴史です。


 さて、その『アフリカン−アメリカン』という言葉ですが、これは現在このエスニック・グループを指すもっとも一般的な表現として普及しています。新聞やテレビなどのメディアは、黒人メディア(多数ある黒人新聞、黒人テレビ局BETなど)も含め、この表現を使っています。


 一方、『アフロ−アメリカン』という言葉は、今では黒人問題に対して特に意識の高い人たちと、年配の人たちだけが使っています。試しに検索エンジンでふたつの言葉をキーワードにしてそれぞれ検索してみたところ、以下の件数が抽出されました。

African American.....2,580,000件
Afro American................335,000件

・・・・・

 ここでちょっと話が逸れますが、Blackは形容詞として、She is Black. (彼女は黒人だ)のように使います。グループとしての黒人を指す場合は、名詞で複数形となり、Blacks in High Education.(高等教育を受けた黒人たち) のように使います。この"Blacks"に、もう少し親しみを込めたい場合は"Black people"と言うこともあります。(なお、黒人が"White people"と言う場合には、皮肉や嫌悪感が含まれていることが多いです)


 また、黒人はよく自分たちのことを"our people"と言います。これには同志、同胞といった意味合いが含まれています。ところが彼らと会話をしている時に、この"our people"に釣られて相手を"your people"と呼ぶことは厳禁です。相手は必ず気分を害します。事情を知らないと少々理不尽に思えますが、昔、白人が黒人を蔑んで"your people"と呼んでいたことが理由です。

・・・・・

 日本の人が書いた文章で、時々『黒人の人』、『黒人の方(かた)』という表現を見かけます。文法的にはおかしな表現だと分かっていても『黒人』と言い切ると、なんだか差別的なニュアンスが感じられるからなのでしょう。かといって、日本語で『黒人』以外の表現法はないし…。


 アメリカで使われているBlack, Blacksの直訳として考えれば、『黒人』にはネガティブな要素はまったくありません。実際、『白人』という言葉は抵抗なく使われています。ただ、アメリカでもWhite, BlackはOKなのにYellowはダメ、という現象があります。言葉とは微妙なものです。


 最後に、アフリカン−アメリカンの知人に訊いてみました。アフリカン−アメリカンとアフロ−アメリカンのどちらで呼ばれたいかと。


 「アフロ−アメリカン? それは古い! でも実を言うと、どっちも好きじゃない。アフリカン−アメリカンが普及してるから、一応そっちを使っているけれどね。僕たちは昔の"Negro"から始まって、時代時代で呼び名を変えられてきた。そのこと自体が嫌なんだ。それに僕はアメリカ人であってアフリカ人ではない。だから"Black American"と呼ばれたい」。


 もちろん、これはひとりの人物の意見であって、『アフリカン−アメリカン』全員の気持ちを代弁しているわけではありません。


What's New?に戻る
ハーレムの出来事に戻る

ホーム