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2000/08/31

ブラックムービー2000秋
映画の中の“フツーの黒人たち”は何処へ?


なんだかブラック・ムービーが元気な(ような気がする)今日この頃。


今夏はサミュエル・L・ジャクソンのクールなリバイバルB級アクション「
シャフト Shaft」のヒットで幕を開け、人気コメディアン、ウェイアンズ3兄弟による「スクリーム」パロディ版の「スケアリー・ムービー Scary Movie」、エディ・マーフィが特殊メイクで肥満一家7人を見事に演じ分けた「ナッティ・プロフェッサー2 Natty Proffesor 2 The Klumps」、マーティン・ローレンスが、なぜかエディ・マーフィと同じくラバー・スーツと特殊メイクで太った中年おばさんに化けた「ビッグ・ママズ・ハウス Big Momma's House」の3本が大ヒット。ウエズリー・スナイプスがジェット・リー主演予定だったのを横取りした、国連エージェントVSニューヨークの中国人ソサエティ黒幕アクション「アート・オブ・ウォー The Art of War」は、やや元気がなかったものの、現在はスティーヴ・ハーヴェイ他4人の人気コメディアンのライヴ・ショーをスパイク・リーが撮った「オリジナル・キング・オブ・コメディ The Original Kings of Comedy」がヒット中。


そして夏は早くも過ぎ去り、9月に入ると新作映画の公開が続々と始まるけれど、やはりブラック・ムービーが多い。公開前なので、どれも未見で質の善し悪しは判断出来ないけれど、数だけは、とにかく揃っている。


まずはフージーズのプラズが主役を務める「
ターン・イット・アップ Turn It Up」。彼のソロ・アルバム「ゲットー・スーパースター」と、やはり彼が書いた同タイトルの小説を原作とした作品で、才能あるミュージシャン(プラズ)が、友人(ジャ・ルール)と共に成功を目指すのだが、音楽ビジネス界には数々の危険が溢れていた…というアーバン・ストーリー。おまけとして、フージーズの仲間ワイクリフ・ジョンとローリン・ヒルも、ちょっぴり顔を出している。


大物モーガン・フリーマンと、超人気コメディアン、クリス・ロックがシケたドラッグ売人に扮して、昼メロ・ファンの人妻と悶着を起すロード・ムービー・コメディが「
ナース・ベティ Nurse Betty」。


ベイト Bait」は、「エニイ・ギブン・サンデー」でアメフト選手を演じたジェイミー・フォックスによる軽快な金庫破りアクション。


テレビのコメディ・ショー「サタデー・ナイト・ライヴ」のティム・メドウズがアフロ・ヘア&ベルボトムの1970年代ファッションで間男振りを発揮するのが「
レディース・マン The Ladies Man」。


DMXやJay-Zなど、デフ・ジャムのアーティストがオールスター出演する「バック・ステージBack Stage」も始まる。


・・・・・


実は昨年の夏に、NAACP(全米黒人向上協会)がアメリカの4大ネットワークに対して、ゴールデン・タイムのテレビ番組のキャストに黒人/ラティーノ俳優が少なすぎると大々的に抗議。それに対してネットワーク側が、99年秋の新番組ラインナップに多少のマイノリティ俳優を追加出演させただけで、要は適当にお茶を濁して終らせたという経緯があった。


ところが、テレビ局がそうやってうかうかしているうちに、ハリウッドがテレビの人気黒人コメディアンを、かっさらってしまったのだ。今回挙げたブラック・ムービーの主演俳優の多く(ウェイアンズ兄弟、「オリジナル・キング・オブ・コメディ」の4人、クリス・ロック、ジェイミー・フォックス、ティム・メドウズ)は、そもそもはテレビで活躍しているコメディアンたちである。


いつまでたっても保守的なテレビ局に対して、ハリウッドは偉い…と言いたいところだけれど、しかし、このコメディとアクションだけのラインナップは何なんだろう? 「ソウル・フード」や「ラブ・ジョーンズ」「ベスト・マン」の登場で、ようやくブラック・ムービーにもギャング以外の“普通の黒人たち”の“普通の生活”が描かれる時代になったと喜んだものだったのだけれど…。


■■■追加情報
9月〜10月に開かれるニューヨーク・フィルム・フェスティバルでは、以下2本のアート/インディ系ブラック・ムービーが限定公開されます。「Boesman and Lena」は、1950年代にフランスに亡命した黒人映画作家ジョン・ベリー夫妻を、ダニー・グローバーとアンジェラ・バセットが演じた実話。「George Washington」は、ノース・カロライナの貧困地区に住む13歳の黒人少年を主人公としたドラマ。
詳細は
http://www.filmlinc.com/nyff/nyfffilms2000.htm

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