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ハーレムとゴスペル 2004


 ゴスペル、ジャズ、ソウル、そしてヒップホップ。ニューヨークの黒人地区ハーレムは、1920年代の全盛期から現在に至るまで、常に世界中の音楽ファンを惹き付けてきた。


 このハーレム、5年ほど前から商店街と住宅地の再開発が始まり、現在も急ピッチで進められている。同時に治安も良くなり、ハーレムを訪れる観光客はここ数年、急激に増えている。


 日本を含め、世界中からハーレムにやってくる観光客がもっとも訪れたい場所として挙げるのが、伝説のアポロ劇場、ソウルフード・レストラン、そしてゴスペル教会だ。


 ゴスペルとはキリスト教徒が神を讚えるために歌う歌。ハーレムには宗派も規模も違う様々な教会が200軒以上もあるが、小さな教会の礼拝では少人数のゴスペル・クワイア(聖歌隊)が、信者と自分たち自身のために素朴なゴスペルをしみじみと歌っている。


 その一方で観光客ツアーを受け入れている大型教会もある。そこにはプロ並に訓練されたクワイアがいて、毎週日曜日の礼拝では迫力満点の見事な歌声を響かせている。中には日曜日に来られない観光客のために、平日に礼拝抜きのゴスペル・コンサートを開いているところもあるほどだ。


 このようにゴスペル・シーンが多様化している今、「ゴスペルは聴く者に希望や可能性を与える魔法を持った音楽だ」と考え、ゴスペルの普及に努めている人物がいる。ゴスペル・ミュージカル『ママ・アイ・ウォント・トゥ・シング』のプロデューサーであるヴァイ・ヒギンセン氏だ。生まれ育ったハーレムに音楽事務所ママ・ファウンデーション社を構えるヒギンセン氏は昨年、ハーレムにミュージカル劇場を建設するプランを発表した。ゴスペルの魅力でさらに多くの観光客とミュージカル・ファンをハーレムに誘致するためだ。


 ハーレムで長年熟成されたゴスペルの歌声は今、ハーレムを再び活性化させるための起爆剤となりつつある。


長崎新聞
2004年3月掲載
禁転載




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